【能楽入門講座】『宗像特別講演』に行ってきました
- 田中 利加
- 2023年11月12日
- 読了時間: 3分

【能楽入門講座】
『宗像特別講演』に行ってきました。
前に「能」を見たのは、娘と行った『大濠能楽堂』でしたから、十数年前になります。
実は、私は、旧姓を「春藤(しゅんどう)」と言います。春藤家は「能」の「ワキ方」(宝生流)を受け持つ能の一家だったのです。戦争でつぶれてしまったそうです。しかも私の祖父(明治生まれ)はどうしても教師になりたかったようで、その時点でなくなってしまいました。
こればかりは仕方ありません。
でも息子は、「春藤」の名を継ぎ、今宮城県にいるのですが、近くに「春藤流」の能を教える場所があるそうです。
これも何かのご縁だと思っています。
そんな私が古典の芸能に興味を持ったのは、実はとても最近です。
大島真須実さんの本『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』を読んでからなのです。私は大島さんと小学校の同級生で、ある日突然連絡があり、本を書いていると教えてくれました。読んだらのめり込み、ほとんど大島真須実さんの本を読んでしまいました。
さて、前置きが長くなりましたが、今日は【能】。福岡市在住の観世流の「森本哲郎さん」の解説で始まりました。
ユリックスのハーモニーホールに入ってびっくり。
いつもの舞台が、能舞台に変身しています。
『「能」はミュージカルと思ってください。みなさん、最初の謳で意味がわからないと言う方がいらっしゃいますが、この中で朝ドラを観られている方いらっしゃいますか?ああ、たくさんいらっしゃいますね。では、オープニングの歌の歌い出しを言える方はいらっしゃいますか?いらっしゃらないでしょ。それと一緒です。はじめがわからなくても、さぁ、始まるぞ!と思って見てくださいね。』
と言ってくださって、目からうろこが落ちたようでした。
「なーんだ、わからなくても良いんだ。」
そして内容を説明してくださいました。
今日の【番組】は、
《高砂》
《棒縛》
《船弁慶》
でした。
「今日の狂言も笑える狂言(棒縛)ですから、大きな声で笑ってください」と、森本さんが言われました。
地謡(じうたい)・囃子方(はやしかた)が出てこられると、本物!と思える方々の立居振舞で、会場の空気が一変していきました。
わかりやすい内容なので、【高砂】は舞を楽しみ、【棒縛】は客席から、大きな笑い声がたくさん上がり、【船弁慶】では「子方」の青木冬青は、小さいのに最後まで力がみなぎっていて、見ている方も自然と集中していきました。
今日の主役「森本哲郎」は《静御前》と《平知盛》の二役。同じ人が演じていると知らなければ絶対にわからないと思います。一つ一つの動きがそれぞれの人物を浮かび上がらせています。でもこんなに違う二人なのに「森本哲朗」さんは、「二人とも違う形で、義経を愛している」と解説されました。
ワキ方の弁慶を演じる「御厨誠吾(みくりやせいご)」さんの迫力あふれる弁慶は、主人を守るため呪文を唱え始めると会場が不思議な空気に包まれたようでした。
あっという間の2時間半。
地謡や囃子方がたの凛とした、振舞と声、そして音は、私たちを悠久の世に連れて行ってくれました。
女性の地謡の方もいて、なんだかとても身近に感じられる「能」でした。
最後に演者の方が、「初めて来られたかはどのくらいいらっしゃいますか?」と問われると、ほとんどの方が、初めて「能」を見られた方でした。
とても気楽に見られて、楽しめる「能」でした。
そして心が引き締まり、また、元気が出ました。
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