top of page

夢の中のピアニスト Vol.137  2022年10月10日

  • 執筆者の写真: 田中 利加
    田中 利加
  • 2022年10月10日
  • 読了時間: 3分

今日は、ピアノの音について話してみたいと思います。

皆さんは、強い音を弾くのが大変そうと思われているかもしれませんが、実は小さい音を弾く方がとてもむずかしいのです。

もちろん強い音も深く味のある音にするのはとても難しいです。

でもその強い音が出せる指じゃないと、小さい音はうまく出ません。


レッスンで私が大きな音を出すと生徒さんは皆さんびっくりされます。

普段小さく弾いていますので、そんな強い音が出ると思われていないのだと思います。

強い音を出すためにかなり小学校の時に練習させられました。

そのおかげで、弱い音を出すことができます。

強い音は力で弾くのではありません。身体の中から出てくる重みをかけて体重を乗せて深い音を出しているのです。ですから有名なピアニストの音はとても柔らかいですね。


さて、弱い音と一口に言っても、実は1つ1つ音の大きさが違うのです。

そのことを伝えてくれたテレビ番組があります。


「クラシックTV」という番組です。

清塚信也さんが司会を務めています。

清塚信也さんは、ピアニストで、桐朋という学園の音楽学部で中学校、高等学校を過ごし、その後モスクワ音楽院で研鑽されました。(私の恩師髙山三智子先生も東京藝大を卒業後、モスクワ音楽院で勉強されていますので、なんだか近親感が勝手にわいています。)

清塚さんは、クラシックを楽しくわかりやすく広めてくださっているピアニストです。


先日この番組で、「グレン・グールド」を取り上げていました。

「グレン・グールド」というピアニストは、とてもハンサムですが、私が小さい頃聞いたレコードにはうなるような声がはいっていました。

でもそれは、

「演奏するときにその音楽に入り込んでいるだよ。」

と当時のピアノの先生が私に教えてくださいました。


そして、とてもとても変わったピアニストの「グレン・グールド」は、ポリフォニー(多声音楽)が大好きだと言っています。ポリフォニーとは、何人もの人が歌っているように、旋律(メロディ)が同時に鳴らされる音楽で、ピアノの場合はそれを二本の手(右手と左手)で奏でる音楽です。

ピアノの音楽では右手がメロディで左手が伴奏という形が多いのですが、バッハはいろんな人が歌っているようにピアノの曲をたくさん作りました。左手も旋律(メロディ)です。

もっと複雑に、二本の手で3人・4人の歌声を作っていくこともあります。

清塚さんはこのように話してくれました。

「右手の旋律を左手が追いかけるとき、右手は音が弱くなってきているのに、左手は強くなっていく。このようなときに一緒に強くなると音楽にならない。」

このことは、右手と左手が完全に違う動きをしているわけです。その全ての音を一人で感じていくのです。


また、清塚さんは、「グレン・グールド」は、強い音に興味がなかったと言われていました。

でも

「一つ一つの音をちょっとずつ大きさが違うように弾く事で音楽を盛り上げている。それを全て自分のものにしている。」

と教えてくれました


天才ですね。


最後にピアニストの「小山実稚恵さん」の言葉をご紹介したいと思います。


「一番のグールドの魅力は、そこに“喜び”があることだと感じています。グールドの身体はグールドが動かしているのかな?っていうような、ものにとりつかれてたような、“悦楽”を感じて演奏している姿がそこにあって“学習と芸術の違い”っていうのは、そこに“真の喜び”があるかないかなというところにいきつく。」





https://www.youtube.com/watch?v=6oyFuepFX_0

 
 
 

最新記事

すべて表示
発表会を終えて(生徒さんに向けてのお便り)

発表会では、お疲れ様でした。 舞台での様子はとても清々しく、一人ひとりがとても大きく見えました。 いろんな感想があったことと思います。私にも教えていただければと思っています。 4月になりました。進学、進級、新しい環境、と、いろいろ変化の多い時期ですね。...

 
 
 

Comments


© 2023 by Classical Musician. Proudly created with Wix.com

bottom of page